ここでは、ゴアテックスのレインウェアの洗濯の手順と、手入れの方法をまとめました。
ゴアテックスのウェアは、洗濯すると防水性能が落ちてしまいそうな気がしますよね。
ですが実際には、こまめに洗濯してあげたほうがゴアテックスの性能を引きだすことができますし、ウェアも長持ちします。
注意点を交えつつ、具体的な手順をまとめたので参考にしてみてください。
ヨウコ
ソウジュ
目次
ゴアテックスの手入れは『洗濯』と『撥水』
ゴアテックスのレインウェアの手入れは、『洗濯』と『撥水加工』の2ステップ。
具体的な手順にはいるまえに、「そもそもなぜ洗濯と撥水加工が必要なのか」をざっくりとお話ししますね。
「てっとり早く手入れの方法が知りたい!」という方は読み飛ばしてください。
ゴアテックスの『防水透湿』の仕組み
ゴアテックスは、『小さな孔(あな)がたくさんあいたフィルム』に、表生地と裏地を貼り合わせて作られています。つまり、1枚の布に見えるゴアテックスは、3層の別々の生地を貼りつけたものになっているんですね。
「雨を防ぎ、ムレ(水蒸気)を逃がす(『防水透湿』といいます)」というのがゴアテックスの特徴ですが、そのキーになるのが、この『孔のたくさんあいたフィルム』。
この孔が「水蒸気よりも大きく、水よりも小さい」ので、防水透湿が実現できるのです。
洗濯でフィルムの孔の汚れを落とす
水を防ぎ水蒸気を逃がしてくれるフィルムですが、使っているうちに汗や皮脂、汚れなどにで孔が目詰まりしてしまいます。
孔がふさがれてしまえば、ウェアの内側のムレを逃すことはできませんよね。
なので、こまめに『洗濯』して汚れをおとし、孔をクリーンに保ってあげることが大切になります。
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撥水加工でゴアテックスの表地をガードする
ゴアテックスは3層になっているとお話しましたが、実は『防水性』があるのは真ん中のフィルムだけで、表地と裏地は水を通す素材です。
水を通す素材に雨があたると、浸水して、生地に水を含んでしまいますよね(保水)。
表地が保水すると、フィルムの表面が『水の層』でカバーされた状態になります。これでは、せっかくフィルムの孔を通過してきたムレ(水蒸気)の行き場がなくなって、外に逃すことができません。
なので、表地が保水しないように、水をはじく加工(撥水加工)をしてあげる必要があるんです。
もともとレインウェアの表地には撥水加工がしてあるのですが、これは使っているうちに弱くなってしまうので、定期的にケアしなければいけません。
つまり、『洗濯』と『撥水加工』のふたつがあって初めてゴアテックスの本来の性能を引き出すことができるのです。
ここでは簡単にまとめましたが、「ゴアテックスのことをもっと知りたい!」という方は「ゴアテックスの仕組みや特徴の解説記事」をチェックしてみてください。

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ゴアテックスのレインウェアの手入れに必要なもの
ゴアテックスの手入れに必要なものは、以下のとおり。
- 洗濯機
- 洗剤
- 撥水剤
- アイロン
さらに、大きめのバケツのようなものと、ゴム手袋があるとバッチリ。
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洗剤については家庭用のもので大丈夫ですが、柔軟剤や漂白剤が入っていないことを確認してください。
個人的には、どうせこまめに使うので専用のものを買ってしまっていいんじゃないかと思っています。
僕はファイントラックの『オールウォッシュ』というアウトドアウェア専用の洗剤と、NIKWAXの『ウォッシュイン』という漬け込みタイプの撥水剤を使っています。
ゴアテックスのレインウェアの洗濯方法
今回洗うのは、厳冬期用のハードシェルジャケットとパンツ。
まずはポケットの中身をすべて出して、ファスナー類をすべて閉めましょう。このとき、フードは出して、ドローコードはすべてゆるめておいてください。
ざっくりと畳んで、洗濯機へGO!
ここでは念のため洗濯ネットを使っていますが、なくても問題はありません。
洗剤を入れて、洗濯スタート。
今回は2着なので、『オールウォッシュ』を30mL投入します。
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洗濯コースは『標準』でいいですが、『すすぎ』は2回に設定してください。
脱水は短時間、もしくはしなくてもOK。ここまでで『洗濯』のステップは完了です。
ちなみに、ドラム式洗濯機でも問題ありません。むしろ、このあとに説明する撥水加工(熱処理)まですべて完結してしまうので、一番手軽に手入れすることができます。
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ゴアテックスのウェアの撥水加工の方法
さて、次は『撥水加工』です。撥水加工は、次の2つのステップに分けられます。
① ウェアに撥水剤を付加する
② 熱によって撥水機能を強化する
こまめに洗濯していてウェアがしっかり撥水しているのであれば、①はスキップして②の熱処理だけでOK。
逆に、しばらく洗濯していなかったり、雨に打たれるとすぐベタッとしてしまったり(撥水しない)するときには、①と②の両方をやってあげましょう。
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レインウェアに撥水剤を付加する
撥水剤は、洗濯したあとの濡れているタイミングで使います。
洗い終わったレインウェアを大きめのバケツに移して、ウェア1着あたり6Lの『温水』と50mLの『ウォッシュイン』を投入します。
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ここで洗濯機を使ってもいいのですが、ウェア1着あたり150mLの撥水剤を使うので、手洗いにすることで節約しています。
撥水剤と温水をよく混ぜて、ウェアが全体的に浸かるようにして、10分ほど放置。
10分たったら、もう一度混ぜて浸かっていなかった部分が浸かるようにして、さらに5分ほど待ちます。
ちなみに、素手でこのステップをやると手が撥水加工されるので、肌が弱い方や気にする方はゴム手袋をすることをおすすめします。
浸し終わったらすすいでいきましょう。
このタイミングで、ファスナー類は開けてしまいます。そうしないと、止水ファスナーの内側に撥水剤が残ったままになってしまうんですね。
撥水剤が残らないように何度か水を替えて行います。洗った水が濁らなくなれば完了です!
ざっくりと水を切って(絞ったりひねったりしない)、風通しのいいところで陰干ししましょう。
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アイロンや乾燥機で撥水機能を強化する
ウェアの撥水機能は、『熱』を加えることで強化することができます。
洗濯乾燥機やアイロンを使って熱を加えましょう。乾燥機なら約20分、アイロンなら『低温(約100度)』で当て布を使いながらアイロンがけしていきます。
ちなみに、アイロンは必ず『ドライ』で使ってください。
また、あまり押さえつけないようにして、ファスナーなど「生地以外の部分」はできるだけ避けましょう。
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熱を加えても撥水機能が回復しないときは、ウェア表面の撥水剤が落ちてしまっているので、ひとつ前のステップに戻って撥水剤を付加してあげましょう。
熱で『撥水性』が強化されるのはなぜ?
レインウェアの撥水剤として使われているのは、『フッ素樹脂』というもの(ゴアテックスのフィルムの素材)。これによってウェアの表面に微細な突起をつくり、水を弾いています。
ところがこの突起は摩擦によって倒れてしまうので、使っているうちに撥水性が落ちてきてしまうんですね。
フッ素樹脂には『熱可塑性』といって「熱によって元の形に戻る」という性質があるので、アイロンや乾燥機で熱をくわえると、突起がたちあがって、撥水性が復活するのです。
レインウェアは、バックパックに当たる肩の部分の撥水が落ちることが多いですよね。
「肩の部分だけ撥水を復活させたい!」という場合には、アイロンやドライヤーで部分的に熱を加えてあげるのも有効です。
さて、これでゴアテックスウェアの手入れは完了です。お疲れさまでした!
まとめ:ゴアテックスの性能を引き出すには手入れが重要
さいごに、ゴアテックスの手入れの流れをまとめておきます。
- ファスナーをしめ、ドローコードなどをゆるめる
- 洗濯機で洗濯する。すすぎは2回。
- 必要があれば撥水剤で撥水処理をする
- 風通しのいいところで陰干しする
- アイロンや乾燥機で熱を加える
こうやってみると、とくに難しいことはしていないことに気づくと思います。
「ゴアテックスの手入れ」とあまり肩肘張らずに、普段の洗濯と同じだと思って(実際、ワイシャツの手入れとほとんど変わらないですよね)、気軽にこまめに洗濯してあげましょう。
「こまめに洗濯すること」、これがゴアテックスのレインウェアを快適に使うための最短のステップです!

ゴアテックスを使用している登山靴は、どのようなメンテナンスが良いのでしょうか?
知人は、登山靴用(皮)のオイルを塗って光沢具合を見て満足していますが、オイルにより皮&ゴアメンブレンの目が詰まるので透湿性が損なわれるのではないでしょうか?
ご質問ありがとうございます。
まず、ゴアテックスの登山靴(レザー)のメンテナンスは、おおまかにつぎの3ステップになります。
① 靴底の泥などをおとしたあとに、ブラシをつかってレザーにつまった砂や埃をおとす
② レザーがパサパサしているときは、クリームやオイルを塗って栄養をあたえる
③ 靴用の撥水スプレーをして、風通しのいいところで陰干しする
つぎに、オイルと透湿性についてです。
オイルはレザーに浸透していくものなので、よほど大量に塗りすぎないかぎり、レザーの目がつまることはないと考えられます。
また、レザーとゴアテックスメンブレンのあいだには、『ニット地』がはさまれるのが一般的です。なので、オイルが直接メンブレンに影響を与えることはほとんどありません。
ザックリとご説明しましたが、登山靴のメンテナンスについては別の記事を用意するつもりなので、よろしければまたチェックしてみてください!