2019年4月16日に常念岳に登ってきたのでそのレポートです。
ルートはバリエーション初級とされる冬季限定の東尾根。前日の降雪とすばらしい好天に恵まれ、絶好のコンディションでの登山となりました。
目次
残雪期の常念岳東尾根日帰りプラン
用意できた2連休は、北海道へと引っ越す前に登山ができるラストチャンス。
残雪期のこの季節、松本生活の終止符にふさわしい山はどこか…。そんな風に考えたときに、真っ先に浮かんだのが『常念岳』でした。
松本の市街地からもよく見える圧倒的な存在感で、ぼくにとって北アルプスのシンボルともいえる山。就職で上京したあとも、目に入ると「帰ってきたなー」と感じてしまいます。
今年の北アルプスは例年よりも雪が少なかったのですが、4月に入っても何度か降雪があり、まだまだバッチリ雪山。そんなわけで、冬季限定のバリエーション入門ルートである『東尾根』から往復することにしました。
当初はテント泊のつもりで計画していたものの、引っ越しでドタバタしていて日帰りに変更。終電で最寄りの『柏矢町駅』にむかい、そのまま歩いてアプローチすることにしました。単純標高差で往復4600m、アプローチの往復20キロというかなりのロングルートです。
柏矢町から深夜の徒歩アプローチ
柏矢町に着いたのは夜11時半。偶然おなじ電車に乗り合わせた先輩が家へ招いてくれたので、ちょっとお邪魔して12時過ぎにスタートしました。
今シーズンは登山を控えていたので久々の雪山です。狙いすましたかのようにちょうど前日の朝に雪が降って、またとない絶好のタイミング。月明かりのなか、はるか遠くにぼんやりと見えるシルエットに向かって歩きます。
1時半に「ほりで〜ゆ〜」の奥のゲートを通過、取り付きには2時過ぎに到着です。
10キロの舗装路をアルパインブーツで歩く気にはなれず、ランニングシューズを持ってきたのですが、これが大正解。アプローチではまったく疲れを感じず、ここから登山靴に履き替えて登山道へと入ります。
じつはこのアプローチと靴を分けるスタイル、山行によってちょこちょこ取り入れているのですがとても快適。登山靴はやっぱり蒸れるので、アプローチは軽快なランニングシューズにしてしまいます。
東尾根をたどって森林限界の手前で朝日
取り付きからちょっと歩いて鉄塔を通過。このあたりで東尾根にのるので、あとは尾根を辿っていくだけの単純明快なルートです。下部はかなり笹で覆われていますが、そこそこ人気のあるルートなのでわりとしっかり道ができていることが多い気がします。
じつは去年も同じルートを歩いたのですが、そのときは盛大にトレースをはずして、真っ暗闇のなかで地形図だよりに登るという心細い経験をしました。今回はちゃんとトレースを見つけることができ、それを辿って順当に高度を上げていきます。
思ったよりも気温が下がったようで、ヘッドライトの光が地面にキラキラと反射します。途中、眠気に襲われて登山道にぶっ倒れて仮眠。さすがに寒くて10分で目が覚めました。
1500メートルあたりで登山道は雪に変わり、ストックをだします。けれどもしばらくするとヤブがでてきて結局ヤブこぎに。一気にペースダウンしてもがきながら、なぜ冬季限定なのか実感します。
標高差にして100メートルほど登るとルートはふたたび雪道に。そして、顔をあげるとすばらしい光景が広がっていました。いい1日になりそうな予感。
あれよあれよという間に日がでてきて、雪面を赤く染めていきます。
お腹もへったので、朝ごはんにしましょう。気になって買ってみたビビンバのアルファ米。ボトルのお湯を注いで、待ち時間の15分は前進。こうすることで停滞時間を減らすことができます。
ちょっと高いのが難点ですが、味はけっこう良かったです。仕上げのごま油が効いていてなかなかイケる。
あまり休憩すると体が冷えるので、休憩もそこそこに上を目指します。ちょっと進むと樹林帯のなかにテントを張るのにちょうどいいスペースがあって、テントが3張ほどありました。
さらに進むと、一気に視界がひらけて稜線に到着です。雲ひとつない快晴に恵まれました。本当はこのあたりで日の出を迎えるつもりだったんですが、ちょっとのんびりしすぎましたかね…
これぞ東尾根。稜線にでてからの絶景パート
ここからは、長くて気持ちのいい稜線歩き。雪は、残雪のうえに春らしい重めの新雪が20センチ弱。ついでにアイゼンも装着しました。
4月らしくないきれいな雪景色にため息がでます。
基本は尾根を忠実にたどればいいのですが、ところどころに岩峰があって、巻いたり直登したりしながらかわしていきます。雪の状態的にトラバースがかなり怖かったので、できるだけ尾根を外さないようにルートをチョイス。
頂上はまだまだ先。そろそろ体力的にはキツくなってきて、山頂への思いが募ります。テント泊の先行者も何人かいたのですが、いつの間にか追い抜いてしまって、雪面にトレースを引いていきます。
そして眼下には安曇野の街並みが。あんなところから歩いてきたなんて、ちょっと信じられない。
圧巻の山襞、奥には焼岳や乗鞍岳が見えています。ここまでくればもうちょっと。
山頂直下のナイフリッジと槍ヶ岳のツーショットも撮れたり。
9時ごろ、最後ののぼりを登り切って山頂に到着です!
驚いたことに、風がまったくありません。山頂は風が吹いてるのが普通なのに。おかげでかなり汗だくになってしまいました。そして、どっちを向いてもすばらしい北アルプスの山並み。疲れた身体を景色に潤されていく感覚です。
穂高連峰、そして明神岳の圧倒的な美しさ。
横通岳に大天井岳。北アルプス南部の名峰をひとりじめです。
ほんとうにコンディションがよくて、気持ちもいいし1時間近くを山頂で過ごしてしまいました。雪山でこんなにのんびりできるなんて、幸せすぎる…
いつまでも居座れる雰囲気でしたが、長居しすぎると眠ってしまいそうなのでそろそろ下山を開始します。
下山は悪雪に苦しみながら
快晴無風で気温もかなり高かったので、あっという間に雪が腐っていきます。核心は、なんどか出現する岩峰部。雪がゆるんでアイゼンの効きが悪く、ピッケルを駆使して慎重に下りました。
ここまで降りればひと息つけます。サラッと書いたけど実際はかなり神経をつかう下りでした。
あとはひたすら来た道を下ります。朝とちがってところどころで踏み抜きますが、それよりも強烈な日差しが暑すぎる。夏か。
やっとのことで樹林帯に戻ってきました。あとはどんどん下るのみ。長いけど、笹ヤブでコケた以外はスムーズな下山でした。
1500m以下はこんなかんじ。もはや夏道ですね。
14時前、東尾根のとりつきはまで戻ってきました。取付き自体はいくつかあるのですが、ぼくはここをよく使います(覚えやすいので)。速攻でゲイターを外してランニングシューズに履き替えると、足が一気に解放されます。ほんとにアプローチ持ってきて正解だった…(2度目)。
あとはのんびり歩いて駅まで。さいごのコンクリートは熱中症になるかと思いましたが、16時ごろ無事に下山完了です。怒涛の15時間行動、お疲れ様でした。
常念岳東尾根は冬の北アルプス入門ルート
長丁場でしたが、そのぶん達成感もひとしお。松本暮らしの締めくくりにふさわしい、そして松本市民らしい、すばらしい登山となりました。これで心残りなく北海道へ向かえそうです。
今回は日帰りでしたが、東尾根は基本的には1泊2日で歩くルートです。冬でも比較的手軽にアクセスできますし、尾根ぞいなので雪崩のリスクも低く、また幕営地も適所にあるので冬の北アルプスの入門ルートとしてはとてもいい選択肢のように思えます。
機会があればぜひ行ってみてください!
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