2018年8月7日-8日で前穂高岳の『北尾根』に行ってきたので、そのレポートです。
初めてのアルパインクライミングとしてチャレンジしたので、その様子を書いてみようと思います!
*『前穂高岳北尾根』はクライミングの知識・装備・技術が必要な『バリエーションルート』です。
『一般登山道』のように整備されておらず、ロープなど特殊な装備をつかって登山者が自分の安全を確保しながらのぼるルートが『バリエーションルート』。
『アルパインクライミング』は、「ヨーロッパアルプスのような登山スタイル」のことで、具体的には「岩壁や氷壁をふくんだ登山スタイル」のことです。
ソウジュ
目次
前穂高岳北尾根の登山プラン
初日に上高地から涸沢カールまであがって1泊し(一般登山道)、2日目に北尾根を登攀(バリエーションルート)して前穂高岳から重太郎新道(一般登山道)で下山、というプラン。
『前穂高岳北尾根』をのぼるいちばんメジャーなプランです。
今回は山岳会の先輩に連れていっていただき、3名でのパーティー登山となりました。
上高地から涸沢ヒュッテへ
初日は涸沢ヒュッテまでいくだけ。のんびりと朝8時半に上高地をスタートして、涸沢まであるきます。
徳沢園のソフトクリームをめあてに、横尾まで
まずは横尾まで、平坦な林道を11キロ。
じつは先月末の『槍穂高縦走』の下山で横尾〜上高地の長さに嫌気がさしていましたが、3人で話しながらあるけばあっという間。
途中の『徳沢園』でソフトクリームをたべたり、ゆるハイクモード全開です。
台風が接近していたので天気が気がかりでしたが、この日は暑いくらいの晴れ。
梓川の水量も、いままでみたことがないほどに減っていました。
横尾からはビールたよりに涸沢ヒュッテへ
横尾からは橋をわたって、いよいよ涸沢へののぼりがはじまります。とはいってもそんなに急なのぼりはなく、ダラダラと3時間ほどの道のりです。
左にひろがるのは『屏風岩』の大岩壁。
いままでは「でかい岩だなぁ」くらいにしか思わなかったのですが、クライミングをはじめてから「あの岩壁を登れるんだ」と思うようになって、もう、興味津々。
先輩がもってきていたルート図と見比べながら、「あのルートがどうだ」とかいっている時間がとても楽しかったりします。
近いうちにトライしたいですね。
のんびりあるいたおかげで、涸沢につくころにはガスガスになってしまいました。雲に隠れてしまっていますが、左が『奥穂高岳』、小屋のうしろにあるのが『前穂高岳』です。
ここからバリエーションルートに入るので、ルートを下見して、はやめに就寝しました。
そういえば今回は軽量化のために、シュラフのかわりに『ヴィヴィ』(シュラフカバーのようなもの)を投入。
モデルはSOLの『エスケープヴィヴィ』です(『エスケーププロヴィヴィ』という、さらに高スペックなモデルもあります)。
気温ははかってないのですが、日が落ちてからグッと気温がさがって、フリースでも寒いくらい。ちょっと不安でしたが、これが非常に快適で熟睡できました。
個人差はありますが、5度くらいまでならとても快適につかえそうな感触ですね。
涸沢カールから前穂高岳へ
2日目はいよいよ北尾根の登攀です。朝2時におきて、4時前に出発しました。
涸沢ヒュッテから『5・6のコル』へ
まずは、涸沢カールから北尾根へあがります。
北尾根にはたくさんのピークがあって、主峰がわから順に2峰、3峰…というかんじで名前がついています。
『5・6のコル』というのは、5峰と6峰のあいだのコルのこと。ヘッドライトの光をたよりに、前日に下見したルートをつめていきます。
雨もパラつきましたが、1時間ほどで無事にコルにあがることができました。
ここからいよいよ、北尾根の登攀がスタートします!
北尾根の登攀と前穂高岳
右手には、これからのぼる『5峰』。
ここは、ロープを出さずにいきます。難易度は『大キレット』あたりの岩稜あるきとおなじくらいでしょうか。
ガスも晴れて、青空が広がります。
午前中にはくずれてくる予報だったので、はやめに山頂をふみたいところですが…
ガスと朝日のコラボが絶景すぎて、ぜんぜん先へ進めません。
もともと天気が不安だったので、こんなに景色がみられるのは嬉しい誤算。終始、テンションあがりっぱなしでした。
景色にみとれながら5峰をのぼりきると、ガスがぬけて4峰が姿をあらわします。
4峰もロープは使いませんが、ルートファインドが難しい。
しばらく直上してからいちど涸沢側(右側)をのぼり、そのあと奥又側(左側)をつめて、最後に直登してピークにぬけました(ここの登り方は人によって違うようです)。
浮石がとてもおおいので、かなり気をつかいますね。
ふと左をみれば大雲海。富士山までみえていました!
ソウジュ
4峰をすぎると、3峰の全貌がみわたせます。ここが北尾根の核心部。
写真右寄りの、大きな岩がボコボコつきでた稜線を登ります。
下の大岩が『十文字岩』で、『十』の字のひとつ左のクラックをのぼります。
上の大岩は中央のワイドクラックをぬけて、そのうえの『チョックストーン(クラックに岩が挟まっているところ)』は左のクラックを。
ルートをイメージしたら、クライミングギアを用意して、いよいよ登攀スタートです。
肝心のクライミング中の写真がないのですが、十文字岩のところがちょっと怖かったです(クライミングシューズもってってよかった…)。
2ピッチで核心部をぬけて、あとはロープをださずにあるいて3峰をクリア。
2峰は3峰のすぐとなりの小ピークで、感覚的には3峰というかんじ。
奥穂高岳と吊尾根の眺めが最高です。
2峰のくだりは、10メートルほどの垂壁。
ロープで懸垂下降するひともいるみたいですが、ふつうにクライムダウン。西穂〜奥穂の縦走路とおなじくらいの難易度でした(西穂〜奥穂はクサリついてますけど)。
さいごは直登して、朝9時、ついに前穂高岳の山頂です!
はじめてのアルパインだったので、かなりの達成感。視界はほとんどガスってしまいましたが、とても嬉しかったです。
前穂高岳は3度目ですが、こうやっていろんなルートから登れるようになると楽しさが倍増する気がしますね。
重太郎新道で上高地へ
よろこびもつかの間、おなかの事情ですぐに下山をはじめました。くだりは重太郎新道で上高地まで。
前穂高岳から紀美子平へ
まずは紀美子平まで。地味に距離があって疲れますよね、この道。
景色を燃料にくだっていきます。
すぐ隣のカッコいいのは明神岳。前穂高岳と明神岳の縦走もしてみたいですね。
そういえば、今回はマウンテンエクイプメントのアルパインパック、『tupilak』をつかってみました。
またレビューしますが、これはかなり傑作の予感です!
紀美子平から重太郎新道で岳沢小屋、上高地へ
紀美子平からは『重太郎新道』で。
このルートもかなり急で危なっかしいので、気を抜けません。一般登山道ですが、重大な事故がよく起きているルートでもあります。
あまりあるきたくないルートではありますが、重太郎新道からみる上高地の箱庭感はけっこうお気に入り。
2時間ほどくだると岳沢小屋です。ここまで急な斜面がつづくので、やっと一息つけました。
岳沢小屋から上高地へ
ここまでくれば、あとは上高地までおりるだけ。
『風穴』で涼みつつ、のんびりくだって上高地です。お疲れ様でした!
まとめ:登山にはいろんなスタイルがある
今回ははじめてのアルパインでしたが、天気にもめぐまれて素晴らしい登山ができました。
一般登山道も楽しいですが、バリエーションが歩けるようになると、もっともっと登山を楽しめる気がします。
ひとことで「登山」と片付けられてしまいがちですが、登山にはいろんなスタイルがあることを忘れずに、自分の一番すきなスタイルを追求したいと感じる2日間でした。
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