登山用品店員が考える、登山靴のかしこい使いわけと揃えかた戦略

登山靴

ここでは「登山靴の使いわけと揃えかた」をまとめました。

ヨウコ

登山靴って高いから、1年中使える靴がほしい!

登山用品店で働いていると、よくこんな相談をされます。

たしかにその気持ちはよく分かります。買えば買うほどお金がかかるし、荷物が増えてジャマだし、メンテナンスも大変。ひとつでどんな登山にも対応できる登山靴があるのが理想的ですよね。

けれど、登山靴もひとつの『道具』。それぞれに「こういう場面でつかうための靴」というコンセプトがあります。

なのでほんとうは登山靴をいくつか持っておいて、たとえば縦走ならこの靴、日帰りならあの靴、といったかたちで使いわけてあげるのがベスト。とても快適に登山できるようになりますし、靴も長持ちします。

そこでここでは、

  • 結局、登山靴はいくつあればいいのか
  • どうやって使いわけるのか
  • どんな風に揃えていくといいのか

という3つのポイントに沿って「登山靴をえらぶときの戦略」を解説していこうと思います。

オールシーズンで登山するための登山靴は3足

まず結論からいうと、快適に登山するために必要な登山靴は、3足です。

ぼく自身、この結論に到るまでは1足ですべて済ませようとしたり、逆に4足をつかい回してみたりと試行錯誤してきたのですが、最終的には「3足あればオッケー」というところに落ち着きました。

ただ、この『3足』というのは、「春から冬までのオールシーズンで日帰りからテント泊縦走までするひと」のはなし。

「冬はいかない」とか「日帰りしかしない」という場合は、またすこし変わってきます。

  • 雪がないシーズンで、日帰りもしくは小屋泊しかしない→1足
  • テント泊の縦走や残雪期にもいきたい→+1足(トータル2足)
  • ガッツリ冬山にもはいりたい→+1足(トータル3足)

まず登山をするためには登山靴が必要なので、それで1足。そこに「重い荷物をかつぐか(縦走するか)」「冬山にもいくか」というポイントでそれぞれ1足ずつプラスされていく感じになります。

登山靴の種類とつかい分け

3足の登山靴の具体的なうちわけはこんなかんじ。

種類 用途
トレッキングシューズ 日帰り、短期の縦走
ライトアルパインブーツ 長期縦走、晩秋・初春の雪山
冬季用登山靴 厳冬期の2000m以上の冬山

ソウジュ

ライトアルパインブーツについては後述しますが、ざっくりと「3シーズン用のゴツめの登山靴」というイメージでOK!

まずはトレッキングブーツ。

ざっくり『トレッキングブーツ』と分けましたが、ここはローカットでもアプローチシューズでもいい(※個人的見解です)と思っていて、軽くてソールが柔らかめの靴のことを指しています。

『アプローチシューズ』って?

クライマーが岩場まであるくためにつくられた靴。ローカットのものが多い。

岩へのグリップ力が強くて、岩場での長時間の歩行でも使える。

次に、ライトアルパインブーツ。

トレッキングシューズよりも全体的に硬く、しっかりした作りのものになります。ソールも腕ではほとんど曲がらないほどの硬さ。アイゼンがつけられる『コバ』のあるものがベスト。

『アイゼン』・『コバ』って?

アイゼンは、凍結した斜面でつかうスパイクのようなもの。靴の裏につけてつかいます。

コバは、アイゼンを装着するための溝のこと。下の写真でいうと、カカト部分の溝がそれにあたります。

冬用登山靴のコバ

そして、冬山に入るのであれば冬季靴は必須。保温材がはいっていることが条件で、これがないと凍傷になります。

また、冬季靴はあくまで冬専用。他のシーズンでは、暑すぎる・重すぎる・ソールが減る(高価なのでもったいない)という三重苦でメリットがありません(真夏に使っているひともたまに見かけますが)。

それぞれ具体的なアイテムをあげながら説明していきますね。

軽快に登山するためのトレッキングシューズ

トレッキングシューズ

もっとも安価ながら、いちばんオールラウンドにつかえるのがこの『トレッキングシューズ』。写真は、2018年話題沸騰の熱成形型トレッキングシューズ、テクニカの『フォージ』です。

荷物が重くならない日帰りや、軽めの縦走で使います。春から秋までの3シーズンにくわえて、冬でも雪のない低山なんかでつかえてしまうので、結局ほとんどの山行でお世話になることになります。

『トレッキングシューズ』といってもいろんな種類がありますが、つかい分けるのであれば、「軽くて軽快に歩けるもの」にしておくことをおすすめします。

「これ1足で日帰りの低山からアルプスの縦走までしたい」と思うと、どうしてもソールが固めでハイカット、重さもそこそこあるゴツい靴になってしまいますが、つかうシチュエーションを限定することで、軽さ・歩きやすさを重視したモデルを選ぶことができる、というわけです。

「登山靴はゴツいやつじゃないと」というイメージがあるかもしれませんが、じっさいには軽くて歩きやすい靴のほうがメリットはたくさんあります。

まず軽いので疲れづらいし、ソールは柔らかいほうが歩きやすいです。歩きなれない硬いソールの靴よりも、普段ばきにちかい感覚で歩けたほうが安心ですよね。日帰りや軽めの登山であれば、圧倒的に軽くて歩きやすいもののほうが快適でコストも安いです。

先ほどもチラッと書きましたが、ここはローカットのトレランシューズやアプローチシューズでも全然OKだと思っています(つかう人の体力・技術にもよるので、すべての登山者におすすめすることはできませんが)。

ぼくはもともとサロモンの『XAプロ』というローカットシューズ(片足390gくらい)をメインでつかっていました。

テクニカ・フォージのレビュー記事も書いているので気になるひとはぜひ。

テクニカ・フォージ【レビュー】テクニカ・フォージ:世界初のカスタマイズ登山靴 サロモンのXA PRO 3D GTX【レビュー】サロモン・XA PROは登山もランもイケる魅惑のトレランシューズ

重装備の縦走から雪まで対応するライトアルパインブーツ

スポルティバのトランゴALP

トレッキングシューズの次によく使うのが、こちらのライトアルパインブーツ。写真はスポルティバの『トランゴ ALP』というモデルで、ライトアルパインの定番です。

ジャンルとしては「3シーズン用の縦走登山靴」といったかたちでしょうか。

荷物が重くなるテント泊縦走をメインに、初冬・晩春の雪の季節にも使います。

トレッキングシューズよりもソールが硬く、手ではほとんど曲げることができません。また、ものによってはアイゼンのコバがついていて、雪のある山でも使うことを想定して作られています。

ライトアルパインブーツに関しては、すこし重くなってもいいので「できるだけしっかりした硬めのもの」を選ぶことをおすすめします。日帰りやライトな縦走はすべてトレッキングシューズに任せることにするならば、こちらはしっかり硬いものにすることで「ライトな登山はトレッキングブーツ、ハードな登山にはライトアルパイン」という使い分けができます。

また、できればアイゼンのコバつきのものを選びたいところ。

3シーズンの縦走ももちろんですが、このクラスの靴であれば残雪期など「気温的にはあまり寒くない(凍傷のリスクはひくい)けど、雪はベッタリと残っている」という時期にガシガシ使えます。

そういう時期はトレッキングシューズでは不安(そもそも、トレッキングシューズはアイゼンがつけられない)だし、かといって冬季靴をつかうには暑すぎる、中途半端な季節。そんなときに安全かつ快適にあるくには、やはりライトアルパインがベストです。

厳冬期に足をまもる冬季靴

スポルティバのネパールEVO

厳冬期(12月~3月)に2000mを超える山に入るのであれば、冬季靴(ウィンターマウンテンブーツ)が必要になります。写真は、おなじくスポルティバの『ネパール EVO』というもの。冬季靴の超定番といった靴ですね。

ライトアルパインブーツとのおおきな違いはつぎの3つ。

  • 防寒を重視したつくり(保温材・厚いレザー)
  • アイゼンのコバが前後にある
  • ソールがほぼフラット

まず、素材であるレザーが厚いうえに保温材がはいっていて、とにかく寒さへの対策がしてあります。アイゼンをバッチリ固定できるように、コバはつま先とかかと両方についています。

そして、ソールはほぼほぼフラット(平ら)。写真では伝わりづらいですが、トレッキングブーツやライトアルパインブーツと比べるとその違いは一目瞭然。トレッキングブーツがいちばんカーブがきつく、ついでライトアルパイン、そして冬季靴はほぼフラット、というかたちです。

冬季靴はその名のとおり、完全に冬専用。夏は暑いし重いし、使い物になりません。もちろんちょっとした雪山ならばライトアルパインブーツで対応できますが、凍傷のリスクなどを考えるとやはり冬季靴が安心です。

値段は高いですが、雪山専用にしておけば雪の上しか歩かないので汚れることも少なく、またソールの減りもゆっくり。残雪期などは土や泥が混ざってくるのでそこはライトアルパインにまかせて、厳冬期専用にすれば長持ちさせることができます。

そして、ここまで紹介した3足を使い分けると、真夏の日帰り登山から冬山のテント泊まであらゆるコンディションで快適に登山をすることができるようになりますよ!

登山靴をそろえる順番について

ここまで3足の登山靴とその使い分けについて紹介してきましたが、どういう順番で揃えていけばいいのでしょうか。それぞれに得意な分野があるので、やりたい登山スタイルが見えているひとはそこに合わせて買うのがベスト。

また、3足すべて揃えるのであれば、上から順番に、つまりトレッキングシューズ→ライトアルパインブーツ→冬季靴という順にそろえていくことをおすすめします。

やはり使用頻度がいちばん高く、コストも安いのがトレッキングブーツ。これさえあれば実際にはほとんどの山にいけてしまいますが、「テント泊がしたい!雪のある季節もやってみたい!」となってきたら、ライトアルパインブーツの買い時です。

そして、「ガッツリ冬山もやるぞ!」となったら冬季靴を買いましょう。

じっさいには、登山を始めるタイミングではテント泊や冬山をやるつもりはなくて、登山をつづけるうちに「あれもやってみたい」と思うようになることがほとんどだと思います。

ですので、はじめから戦略的に揃えるのは難しいのが現実ですが、もし「いずれは冬山も!」というモチベーションのあるかたは、こういう順番で揃えていくと幸せになれますよ。

まとめ:登山靴はつかい分けるととても快適!

いろいろと書いてきましたが、ここでぼくがお伝えしたいことはつぎの2つ。

  • 登山靴は3種類をつかい分けると快適
  • はじめの1足はトレッキングシューズがおすすめ

ざっくりいうとこんな感じです。

快適な登山ライフは足元から。目的のスタイルにあった登山靴を用意して、登山を楽しんでくださいね!

テクニカ・フォージのレビュー』や『サロモン・XAプロのレビュー』もあわせてどうぞ。

テクニカ・フォージ【レビュー】テクニカ・フォージ:世界初のカスタマイズ登山靴 サロモンのXA PRO 3D GTX【レビュー】サロモン・XA PROは登山もランもイケる魅惑のトレランシューズ
この記事をシェア

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です