カラフルな登山の服を見て、「もっと落ち着いた色にしてくれれば、街でも使えて一石二鳥なのに」と感じた方もいるでしょう。
最近でこそモノトーンの落ち着いた色のウェアも見られるようになりましたが、登山用のウェアはやはりカラフルなものが大多数を占めています。
この記事では、「なんで登山用のウェアはカラフルなの?」という疑問を突き詰めていきます。
目次
登山のウェアがカラフルな理由
結論からいうと、登山のウェアがカラフルな理由として、おもに以下の2点があげられます。
- 遭難したときの視認性の良さ
- スズメバチ対策
それぞれ説明していきますね。
カラフルなウェアは遭難したときに発見しやすい
まずひとつめに、「視認性がいい」という点です。
もし遭難して救助されるようなシチュエーションになったとき、視認性の高さは早期発見につながります。
消防士やレスキュー隊をイメージすれば分かりますが、「命の危険のある場所で活動するときには視認性の高いウェアを着る」というのは、ひとつのリスクマネジメントなのです。
逆に、モノトーンに代表される視認性の低いカラーのウェアには、「もし遭難した場合に、見つけてもらえる可能性が下がる」というリスクがあることになります。
実際に、「遭難者が黒いウェアを着ていたために、遠くからみたときには木と見分けがつかなかった」と書かれた発見者の登山記録も残っています。
遭難するようなコンディションでの視認性の重要性
もうちょっと踏み込んで「遭難とウェアの色」について考えてみましょう。
基本的に、晴れていて視界がクリアなときには、道に迷ったり、足を滑らせたりすることは少ないでしょう。遭難しやすいのは『雨や雪、風や霧が組み合わさって、視界が悪いとき』ではないでしょうか。
登山をしていてそういうコンディションを体験したことのある方は分かると思いますが、基本的に山で「視界が悪い状態」というのは、真っ白か真っ黒、もしくは灰色の3パターンになります。
このことから、白・黒・グレーは風景に溶け込んでしまうので、視認性が低いカラーだと分かりますよね。
逆に、赤・青・オレンジ・ピンクなどの『自然界に存在しない人工色』は目立つと言えるでしょう。だから、登山ウェアはそういう色のものが多いんですよね。
黒いウェアはスズメバチに襲われやすい
また、黒いウェアを避けるもうひとつの理由として、『スズメバチ』があります。スズメバチは刺されると命に関わることもあるので、襲われるリスクは避けたいですよね。
正直、個人的には「黒はハチに襲われやすい」という意見には科学的根拠はないと思っていたのですが、調べてみると、とくに『スズメバチ』は黒いものを最優先で攻撃するという実験結果がありました。
ただし「黒以外のウェアを着れば襲われない」というわけではなくて、あくまで「怒ったときに黒いものから狙う」なので、まずは「刺激しないこと」が最重要です。
モノトーンのウェアもたくさん売られている
ここまで読んで、「黒いウェアにリスクがあるなら、そもそも作らなければいいのに…」と思った方もいるかもしれません。とくに最近では、黒などモノトーンのウェアもたくさん売られていますよね。
アウトドアメーカーがこのようなカラー展開をする理由は、おそらく「モノトーンのウェアのほうが儲かるから」だと思います。
アウトドアウェアを買っているのは、登山者だけではありません。登山用品店で店員をしている経験から言うと、登山で使うためにアウトドアウェアを買っている人はお客さんの半分くらい。
つまり、残りの半分は「街で使うための服」としてアウトドアウェアを選んでいるのです。
そうなると、いろんなファッションに合わせやすい落ち着いたカラーの方がよく売れるので、メーカーとしてもモノトーンのウェアを作った方が儲かりますよね。
だから、「メーカーが登山用のウェアとして黒いジャケットを作っているんだから、ウェアのカラーなんて気にしなくていい」という意見にはあまり同意できません。
まとめ:ウェアの色も登山のリスクマネジメント
まとめると、以下のようになります。
- 登山ウェアがカラフルなのは遭難時の視認性の向上と、ハチ対策
- カラフルなアウターを選ぶことはリスクマネジメントになる
僕が伝えたいのは、「モノトーンのウェアは危険だから選ぶな!」ということではありません。僕ら登山者は、自分の頭で考え、選択して、自分の命を守らなければならない、という話です。
リスクがあることを承知の上でモノトーンのウェアを選ぶのも、カラフルなウェアでリスクマネジメントするのも、登山者ひとりひとりの自由です。
ただ、「なんとなくウェアの色を決めている」という登山者がいるならば、ぜひ知っておいてほしい知識だと思っています。
こんにちは。黒っぽい服は蜂、アブ、ブヨ等やっかいな虫の標的にされるので避けています(これは実体験としてホントにそう思います)。遭難時の視認性よりそちらの理由で選ばれているかたの方が多いように思います。
アブ、ブヨは虫よけスプレー等でも対応できますが(鬱陶しいですが)、蜂はシャレにならないので。。。。
こんにちは。
ご指摘ありがとうございます!黒はスズメバチに狙われやすいという点、おっしゃる通りだと思います。
ご意見を踏まえて、記事内容を更新しておきますね。